【人コラム】「困民丸」代表 村本哲二さん(富山市)

2008年04月01日 朝日

ホームレス支援ネット「困民丸」代表


 JR富山駅周辺で生活するホームレスを支援するボランティア団体「困民丸」代表の村本哲二さん(56)=写真は、富山市内の一軒家で50〜60代の約10人のホームレスと共同生活をし、仕事探しなどをサポートしている。「新しい自分を見つけ、社会に出るきっかけをつかんでほしい」


 毎日、おにぎりやパンなどを持って、駅の地下道や橋の下で暮らすホームレスに会いに行く。仕事をする意欲がある人には「うちで一緒に生活してみない」と声をかける。毎月第3日曜には、駅北側の公園で困民丸のメンバーらと、炊き出しもしている。


 富山市出身。中学を卒業後、自ら選んで親類の店で働き始めた。だが、1年もたたないうちに「もっと勉強したい」という思いが強くなる。大検を受け、静岡の短大に進学。それでも自分は「中卒の少数派」という思いは変わらなかった。


 7年前の初夏、人生観がかわった。当時、住んでいた千葉県の自宅近くの路上で、万引きをして逃げる中年の男を捕まえた。男は片腕がなかった。「仕事ができないんだ……」。男は吐き捨てるように言った。警察に引き渡したが、釈然としない思いが残った。「徹底的にかかわるべきではなかったのか」


 中学卒業後、高校に通う同世代と同じ電車に乗り、作業服を着て仕事場に向かう自分が感じた「少数派」の意識。片腕のなかった男のような、仕事に就きにくい「少数派」。同じ「少数派」として何か手助けできないか。そんな思いが芽生えた瞬間だった。


 昨年9月末、印刷会社を退職。千葉に妻や子どもを残し、親類や旧友が住む富山市に転居し、ホームレス支援活動の準備を始めた。実家に戻るのは月1度だけ。「家族には、少しずつ理解してもらえるようになってきたかな」(今直也)